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プラスチック規制の潮流

【1.プラスチック規制の潮流】
<拡大生産者責任(EPR)の要求の潮流>
1.ERPの潮流
 環境関連業務に携わると、最初に「アメリカのラブキャナル事件」、「EPR」や「ドイツのデュアルシステム」の資料が渡されます。日本法との違いに理解がなかなかできなかった記憶があります。ことに、1979年の「ラブキャナル事件」を契機として30年も前に合法的に廃棄した化学物質について、浄化の費用負担を有害物質に関与した全ての潜在的責任当事者(Potential Responsible Parties:PRP)が負うというスーパーファンド法が1980年に制定されたことなどの生産者責任に広さに戸惑い、「遵法」管理担当者は、何を基準に社内対応すべきかと悩みました。このような過去を思いつつ、最近EPRが再び法規制でキーワードになってきていますので、法規制の潮流を整理してみます。

 欠陥商品は製造物責任法(PL法)で規制されますが、対象は「製品」であり「消費者」の使用段階です。EPRは、生産から廃棄までのすべての過程で、環境影響に対して生産者に責任があるとするものです。特に、廃棄時点での「処理のしやすさ」「リサイクルの容易性」に生産者に責任があるとされています。生産者には、リサイクルを容易にする材料選択、設計が求められますので、「拡大」された責任と言われるようになりました。1972年にドイツで「循環経済廃棄物法」が制定され、1986年に「廃棄物回避と管理法」で廃棄物対策について、発生回避、再利用、適正処理という優先順位を制定しました。1991年には包装廃棄物政令(*1)を公布しました。

第1条 廃棄物管理の目標
(1) この規制は、包装廃棄物が環境に与える影響を回避または軽減することを目的としている。包装は廃棄物にしないことを第一優先とする。
それ以外の場合は、包装廃棄物の処分よりも、包装の再利用、マテリアル リサイクル、およびその他の形態の回収が優先される。

このような状況から、製造・流通業界の共同出資によってDSD(デュアル・システム・ドイツランド)社が発足しました。システム参加企業は、「グリーン・ドット」(Der Grune Punkt)のライセンス料をDSDに支払い、DSDは「グリーン・ドット」のついた包装材を回収します。ライセンス料を払った(デポジット)企業の回収義務を履行するもので、ライセンス料は包装材の材質や重量・容量によって異なり、包装材の量的削減やリサイクルしやすい材質の使用を促す効果を狙っています。
消費者から無料で回収されますが、DSDはEPRの仕組みでにより、デポジット料は消費者が負担をしています。

包装材を廃棄物としないとする考え方は、EUのWFD(廃棄物枠組み指令)((EC)2008/98)(*2)の第4条で示され、ドイツ以外のEUの共通認識となっています。

第4条 廃棄物のヒエラルキー1. 以下の廃棄物ヒエラルキーは、廃棄物防止および管理に関する法律および政策の優先順位として適用されるものとする。
(a) 発生抑制
(b) 再利用のための準備
(c) 再生利用
(d) その他の再生 例:エネルギー回収
(e)廃棄

現在の「循環経済廃棄物法(Kreislaufwirtschaftsgesetz ? KrWG)(*3)では、パート3(プロダクトスチュワードシップ)で、理念を明確にしています。

パート3 第23条 製造物責任
1.製品を開発、製造、作業、加工、または配布する者は、循環経済の目的を達成するための製品責任を負うものとする。製品は、可能な限り、製造および使用中の廃棄物の発生を減らし、使用後に発生する廃棄物が環境に配慮した方法で回収または処分されるように設計する必要がある。製品を流通させる際には、使用適性が維持され、無駄にならないように注意する必要がある。
2.製造物責任には、特に以下が含まれる。
資源効率が高く、再利用可能で、技術的に耐久性があり、修理可能であり、使用後、適切で無害で高品質の回収と環境に配慮した廃棄に適した製品の開発、製造、および市場投入。

2001年にOECDが「拡大生産者責任~政府向けガイダンスマニュアル~」(財団法人クリーン・ジャパン・センター訳)(*4)を策定しました。
 このガイダンスマニュアルでは、EPRは、廃棄物の処理費用を消費者・生産者負担とすることで、生産者が処理費用を下げようとする刺激となり、リサイクルしやすい製品や廃棄処理の容易な製品などの環境配慮製品の設計に移行することを狙っている
としています。

 これらの規制の経緯は、1972年の「成長の限界」(ローマクラブ「人類の危機」レポート)、1992年の「限界を超えて」(成長の限界の著者)や1987年の国連「環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント(ノルウェー首相(当時)委員会))によ
る「持続可能な開発(Sustainable Development)」の地球規模での規制の潮流の一端ともいえます。

 EPRは、ある意味では、行政負担が軽減されますので、規制の動機付けとなり、「持続可能な開発」「2050年カーボンニュートラル」が政策のキーワードになり、規制法の基本理念として再び注目を浴びてきています。

この潮流を背景とした規制法を紹介します。

(以下次号に続く)

​(2023年3月)

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