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プラスチック規制の潮流:フランス国内法のマーキング規制

【1.プラスチック規制の潮流:フランス国内法のマーキング規制】
2023年5月29日から6月2日にかけて、パリのUNESCO本部で海洋環境を含むプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書を開発するための政府間交渉委員会の第2回会合(INC-2)が行われました。(*1)議論の内容に関しては環境省から結果概要が公表されています。(*2)
この委員会は、「プラスチック汚染の終結:国際的な法的拘束力のある文書に向けて」と題された国連環境総会(UNEA)決議 5/14(*3)に基づいており、2024年末までに国際条約をまとめるために5回の会合が予定されています。今回は昨年11月28日から12月2日ウルグアイで開催された第1回会合に続く第2回目となります。
第2回の論点は、オプションペーパーにある3つの検討オプションでした。そのなかで最もアグレッシブなオプションが、「X年までにプラスチック汚染を終わらせ、その悪影響から人の健康と環境を守るために、循環型プラスチック経済の促進を含め、プラスチックのライフサイクル全体における生産、使用、排出を削減する。」であり、「X年」を入れるかが参加国の間で議論が割れていた部分でした。
このような視点で世界の潮流を俯瞰すると、EUが先行しており、その中でも特にフランスが先行しているように見えます。
そこで今回は、フランスのプラスチック規制の現状と、その根幹をなすマーキング規制について取り上げてみます。

1.背景と概要
フランスでは、2020年2月に「廃棄物と循環経済との闘いに関する法律」(“LOI n° 2020-105 du 10 février 2020 relative à la lutte contre le gaspillage et à l'économie circulaire”:L2020-105)(*4)を制定し、従来の環境法を大幅に修正しました。
そのなかで、①2025年1月1日までにリサイクルプラスチック100%、および②2040年までに使い捨てプラスチックの販売廃止、の目標を設定しました。
L2020-105は、その名前のとおりプラスチック製品のみならず建築廃棄物、電子・電気製品、電池、化学製品、および木材など人の健康と環境にリスクをもたらす可能性のある多岐にわたる製品の廃棄物回収・リサイクルによる環境への放出量抑制を規定しています。
その一部として、プラスチック包装材、容器、製品などプラスチック使用量の抑制、リユーズ・リサイクルなどによる環境負荷軽減をめざしています。
強制目標として、2025年までにプラスチック廃棄物の50%以上、2030年には55%以上をリサイクルすることが罰則付きで規定されています。

2.プラスチック製品のマーキング規制
リサイクル率を上げるためには、廃棄物を適切に分別し回収することが必要となります。そのために、L2020-105は特定製品に拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility:EPR)を付し生産者に設計段階からのリサイクル材料の使用と廃棄物の回収、処理の責任を負わせます。この責任の一部として、家庭用のガラス包装を除きEPR対象のリサイクル可能な製品には、分別指示の対象であることを知らせる標識(マーキング)を付けることが義務づけられています(L541-9-3、L541-15-10)。
この標識には、製品からの廃棄物の分別または持ち込みの手順を指定する情報も付加する必要があります。
また、製品がデポジット対象である場合には、その事実を表示する必要があります。
適用条件は、政令D2021-835 (*5)で規定されています。
分別指示対象を示す標識は、Trimanロゴ(政令D2014-1577 (*6))を用い、分別手順を示すタグと組み合わせて製品に貼付することになります。
また、消費者が分別指示に関して混乱を招く標識(二つ以上の矢印で構成されているもの)は取り除くことが規定されているので、従来用いられてきたグリーン・ドット標識は付けられなくなりました。

3.まとめ
以上のように、フランスではすでに期限を付けたアグレッシブなプラスチック規制が法制化されています。内容も、プラスチックの製造から使用、リユーズ・リサイクルまで一貫した規制となっており、製造者にライフサイクルを通じた対応の責任(拡大生産者責任)を明文化し、罰則を設けているなど徹底したものとなっています。
特に、製品がデポジット対象の場合には、決められたマーキングと共に分別方法を示すタグなどを貼付するなど消費者に正しい分別・回収を促す措置は、日本から製品を輸出する企業も対応が必要になりますので、注意が必要です。

引用先
(*1) プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(INC-2)
https://www.unep.org/events/conference/second-session-intergovernmental-negotiating-committee-develop-international
(*2) プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第2回政府間交渉委員会の結果概要
https://www.env.go.jp/press/press_01717.html
(*3) 決議「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際文書(条約)に向けて」
https://www.env.go.jp/water/inc.html
(*4) 廃棄物と循環経済との闘いに関する法律 L2020-105
https://www.legifrance.gouv.fr/loda/id/LEGISCTA000041554510
(*5) 標識の適用条件D2021-835
https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000043714227
(*6) Trimanロゴ D2015-1577
https://www.legifrance.gouv.fr/download/pdf?id=Lxa4gXV4LPGaxbOO2JSxwDL4_SR2qRLCYpr0VmVNiNA=

(一社)東京環境経営研究所)
 

​(2023年7月)

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