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生分解性プラスチックとオキソ分解性プラスチック

【1.生分解性プラスチックとオキソ分解性プラスチック】
1.生分解性とオキソ分解性
生分解性とは基本的に微生物の作用によって化学物質が他の物質に分解される性質のことを指します。最終的に二酸化炭素と水まで分解するとされ、生分解性をもつ素材は循環型の材料として期待されています。生分解性プラスチックの種類としては、微生物由来の微生物産出系やセルロースなどの天然物系、ポリ乳酸などの化学合成系などが知られています(1)。
オキソ分解性とは、光や熱の作用により化学物質が酸化して分解していく性質を指します。オキソ分解性プラスチックは光と熱に加えプラスチックに含有する添加剤の作用により、急速に分解し細片化する性質を持つものをいい、身近な例ではポリエチレンやポリプロピレンなども該当します。これらは細片化が進行した際に生分解性がないため、環境中にマイクロプラスチックとして残留することが懸念されています。こうした懸念は主に海洋プラスチックごみの問題として世界的に注目されています。

2.生分解性プラスチックに関する状況
EUは2018年1月に採択されたEUプラスチック戦略(2)の中で、生分解性プラスチックの普及は、海洋プラスチックの問題に対し有効な手段の一つと位置づけています。生分解に関連するEN規格としては、包装材に関する「EN13432」やプラスチック全般に関する「EN13432」などが確認でき、これらの規格を認証する機関も存在します。ただし、EUは現状の生分解性としているプラスチックの多くが自然環境(特に海洋環境)で見つけるのが困難な特定の条件下で分解するとし、結局は分解せずに環境中に残留することで生態系に害を及ぼす可能性があることを指摘しています。今後、EUでは政策枠組みとして生分解性やバイオベース、土壌化可能なプラスチックについても、どのように定義していくかを決定していく見通しです(3)。
日本国内においては生分解に関連するJIS規格として包装材に関する「Z 0130-6:2015」などが確認できます。ただし、海洋での生分解性については、「バイオプラスチック導入ロードマップ」(4)の中で、分解度合い・スピード等の生分解性をコントロールする技術の確立には一定の時間を要するとし、EUと同様に海洋生分解性を評価する手法の確立に向けて国際標準化のための議論を進めている段階です。
中国はGB規格としてGB/T 41010-2021 「生物降解塑料与制品降解性能及??要求(生分解性プラスチックと製品の分解性能及び標示に関する要件)」を2022年6月21日に発効しました。この国家規格は生分解性および生分解性率などの用語と定義を規制し、分解性能要件、マーキング要件、および検査方法を定めています。今後、この規格がどのような取り扱いになるのかは注視しておく必要があります。
なお、その他の生分解性に関する規格としては、国際的なISO規格(ISO 18606,ISO17088など)や米国のASTM規格(ASTM D6400, ASTM D6868)などがあります。これらも生分解性プラスチックに関する議論に影響を与えると考えられるため、注意しておく必要があるといえます。

3.オキソ分解性プラスチック関する状況
EUはオキソ分解性プラスチックに関する規制として「特定のプラスチック製品の環境への影響の削減に関する2019年6月5日の欧州議会および理事会の指令(Directive(EU) 2019/904)」を施行しています(5)。この指令の中でオキソ分解性プラスチックの定義は、酸化によってプラスチック材料が微小断片に断片化または化学的分解する添加剤を含むプラスチック材料を意味するとしています。この指令に基づき加盟国の国内法により、オキソ分解性プラスチックの使用は禁止されていく方向です。
日本国内においては「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が2022年4月1日より施行されています(6)。この法律はオキソ分解性を含むプラスチックに対し、再資源化に資する環境配慮設計やワンウェイ(使い捨て)プラスチックの使用の合理化などを求めており、主にリサイクル関連の施策を推進しています。
 中国は2020年1月に「プラスチック汚染管理の更なる強化に関する意見」(7)として、一部のプラスチック製品について段階的に製造、販売、使用を禁止または制限する方針を打ち出しています。2021年9月に国家発展改革委員会生態環境省が公表した「プラスチック汚染防止行動計画」(8)においても使い捨てプラスチック製品に重点を置き、プラスチック製品のリサイクル性を高め、使い捨てプラスチック製品の使用削減を継続的に推進するとしています。
 各国で多少の温度差があるものの、オキソ分解性を含むプラスチック製品の使用削減は、世界的な流れになっていると考えられます。

4.まとめ
生分解性プラスチックをとオキソ分解性プラスチックに関係する法規の制定は、今後、世界的にも進んでいくものと思われます。ただし、生分解性プラスチックとオキソ分解性プラスチックはそれぞれ解釈の余地がある用語でもあるため、対象国がどのような要件で判断しているのかを把握して対応していくことも重要になると考えられます。

引用先
(1)https://urldefense.com/v3/__https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=54__;!!OzAIPA!A6s3ZLknsrUncoOM3Wy8RrouaBRb3yFoA4t7rcEBSJjg6cybYl-bWHE0tT_AIMOXN1tHp4jvlaqXCNuusW96NTX8xI7$
(2)https://urldefense.com/v3/__https://ec.europa.eu/environment/circular-economy/pdf/plastics-strategy-f__;!!OzAIPA!A6s3ZLknsrUncoOM3Wy8RrouaBRb3yFoA4t7rcEBSJjg6cybYl-HE0tT_AIMOXN1tHp4jvlaqXCNuusW96CKcYYeq$
(3)https://urldefense.com/v3/__https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/13138-Policy-framework-on-biobased-biodegradable-and-compostable-plastics_en__;!!OzAIPA!A6s3ZLknsrUncoOM3Wy8RrouaBRb3yFoA4t7rcEBSJjg6cybYl-_bWHE0tT_AIMOXN1tHp4jvlaqXCNuusW96EoU0_5m$
(4)https://urldefense.com/v3/__https://www.env.go.jp/recycle/plastic/bio/roadmap.html__;!!OzAIPA!A6s3ZLknsrUncoOM3Wy8RrouaBRb3yFoA4t7rcEBSJjg6cybYl-_bWHE0tT_AIMOXN1tHp4jvlaqXCNuusW96Gcod7_f$
(5)https://urldefense.com/v3/__https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2019/904/oj__;!!OzAIPA!A6s3ZLknsrUncoOM3Wy8RrouaBRb3yFoA4t7rcEBSJjg6cybYl-_bWHE0tT_AIMOXN1tHp4jvlaqXCNuusW96HsmxbQ9$
(6)https://urldefense.com/v3/__https://www.env.go.jp/recycle/plastic/circulation.html__;!!OzAIPA!A6s3ZLknsrUncoOM3Wy8RrouaBRb3yFoA4t7rcEBSJjg6cybYl-_bWHE0tT_AIMOXN1tHp4jvlaqXCNuusW96N5qmHrU$
(7)https://urldefense.com/v3/__http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2020-01/20/content_5470895.htm__;!!OzAIPA!A6s3ZLknsrUncoOM3Wy8RrouaBRb3yFoA4t7rcEBSJjg6cybYl-_bWHE0tT_AIMOXN1tHp4jvlaqXCNuusW96Lukm5Fm$
(8)https://urldefense.com/v3/__http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2021-09/16/content_5637606.htm__;!!OzAIPA!A6s3ZLknsrUncoOM3Wy8RrouaBRb3yFoA4t7rcEBSJjg6cybYl-_bWHE0tT_AIMOXN1tHp4jvlaqXCNuusW96BoKPNrQ$

(一社)東京環境経営研究所)

​(2022年9月)

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